請負契約
請負契約に当って、契約の当事者は各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければいけません。
建設工事の請負契約の内容
建設工事の請負契約を締結する際に、契約を交わす当事者は契約内容を書面に記載して、署名または記名押印し相互に交付する必要があります。記載しなければならない主な事項は次のようなものがあります。
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工事着手の時期及び工事完成の時期
- 請負代金の前払い又は出来高払いの時期及び方法
- 設計変更、工程の変更、請負代金の変更の方法に関する定め
- 天災又は不可抗力による工期の変更または損害の負担、その額の算定方法に関する定め
- 価格等の変動、変更に基づく請負代金、工事内容の変更
- 第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担に関する定め
- 資材の支給、機械等を貸与する場合その内容及び方法
- 既済部分検査及び完成検査の時期、方法、引渡しの時期
- 工事完成時の請負代金の引渡しの時期、方法
- 瑕疵担保責任又はその履行に関する保証保険契約の締結に定めをするときはその内容
- 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息違約金その他の損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
現場代理人の専任
現場代理人は請負人の代理人として、請負契約の的確な履行のために工事現場に常駐しなければいけません。そして、工事の施工から契約関係事務に関するすべての事項を処理する役割を持っています。会社であれば社長の代理人となって工事現場を管理することを意味します。現
建設業法上、現場代理人を置くことは義務付けられていません。しかし、工事現場でのトラブルを防止したり、契約を適正に履行するために現場代理人を選任した場合は現場代理人の権限に関する事項などを書面により注文者に通知する必要があります。公共工事においては公共工事標準請負契約約款により現場代理人の設置が求められているため、必ず設置しなければいけません。
不当な契約・取扱いの禁止
冒頭で説明しましたが、建設工事における請負契約というものは、誠実に履行されなければいけません。よって、次のようなことは禁止されています。
- 注文者は自己の取引上の地位を利用して、注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金として契約を結んではいけません。
これは、安い金額で発注してはいけないということです。どう考えても請負者が赤字になるような金額設定を行ってはいけません。 - 注文者は契約締結後、自己の取引上の地位を利用して、注文した建設工事に使用するための資材の指定をしたり、その購入先を指定し請負人に購入させるなど利害を害してはいけません。
いくら注文する側がお客様になるからと言って、神様になるわけではないですよね。なんでも発注者の思い通りに工事が進まないようになっています。
建設工事の見積
建設業者は注文者から請求されたときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を提示しないといけません。
見積もりを提示するタイミングは契約の方法によって異なります。
随意契約・・・契約する以前
入札・・・・・入札を行う以前
見積書に記載する事項は請負代金の額以外に請負契約書に記載すべきすべての事項について可能な限り具体的な内容を提示する必要があります。
注文者は予定価格に応じて以下の見積もり期間を与えなければいけません。
予定価格 | 見積り期間 |
5000万円未満 | 1日以上 |
500万~5000万円未満 | 10日以上(やむを得ない時:5日以上) |
5000万円以上 | 15日以上(やむを得ない時:10日以上) |
建設工事の一括下請負禁止
建設業者は、方法・手段を問わず、建設工事を一括して他人に請け負わせても、一括して請け負ってもいけません。公共工事はいかなる時も一括下請負は禁止されています。ただし、多数の者が利用する施設で重要な建設工事、公共工事以外の場合については、発注者からの書面による承諾を受けていれば、例外として一括下請負が認められています。
基本的には、一括下請負は禁止です。特に公共工事については絶対に禁止されています。認められるのは民間の工事で発注者から承諾を受けている場合です。
元請負人の義務【頻出】
元請負人が工事の一部を下請に出す場合は、工事内容に応じて、工事の種別ごとに材料費、労務費その他の経費の内訳を明らかにした状態で、建設工事の見積もりを行うようにしないといけません。これは、下請負人の経済的地位の確立と、その体質改善のためです。建設業法は他にも、次のような義務を元請負人に課しています。
- 下請負人の意見の聴取
元請負人は、請け負った建設工事を施工するのに必要な工程、作業方法を定めるときは、あらかじめ下請負人の意見を聞かなければいけません。 - 下請代金の支払期限
元請負人は請負代金の出来形部分に関する支払いを受けたときは、支払いの対象になった部分の施工をした下請負人に対して、相当する下請負代金を支払わないといけません。さらに、期日も決まっていて、支払いを受けた日から1か月以内でかつ可能な限り短い期間内に支払わないといけません。 - 下請人の着手費への配慮
前払い金を注文者からもらっているときは、下請負人にも、資材の購入費や、労働者の募集など建設工事に必要な費用を前払いしてあげるなどの配慮をしなければいけません。 - 検査及び引渡し
元請負人は下請負人からその請け負った工事が完成したことを通知されたときは、通知を受けた日から20日以内でかつ可能な限り短い期間で完成を確認する検査を実施し引き渡しを受けなければいけません。下請負人が申し出た場合は、原則として直ちに工事目的物の引き渡しを受けなければいけません。ただし、工事完成の日から20日以内で一定の日を引き渡し日とする特約がある場合はその日が引き渡し日となります。
- 特定建設業者の下請代金の支払い期日等
特定建設業者が注文者となった場合で、下請業者が特定建設業者でなく、資本金4000万円未満の場合は下請代金の支払いに次のようなルールがあります- 下請代金の支払期日は、下請工事の完成後に下請業者から申し出があった日から50日以内に下請代金の支払いを行わなければいけません。
- 下請代金の支払いについて、その支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難な手形を交付してはいけません。
- 下請代金の支払いに遅延が生じた場合は、遅延利息を支払わなければいけません。
例題
建設工事の請負契約について「建設業法」上、定められていないのはどれか。
- 元請負人は、その請け負った建設工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法を定めようとするときは、あらかじめ、注文者の意見を聞かなければならない。
- 請負契約の当事者は、工事完成後における請負代金の支払いの時期及び方法を契約の書面に記載しなければならない。
- 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
- 請負契約の当事者は、契約に関する紛争の解決方法を契約の書面に記載しなければならない。
解説
- 元請負人は、その請け負った建設工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法を定めようとするときは、あらかじめ、下請負人の意見を聞かなければいけません。
注文者ではなく下請負人に意見を聞かないといけないので、1が誤っています。 - 工事完成後における請負代金の支払いの時期及び方法は、建設工事の請負契約書に記載しなければいけません。よって正しいです。
- 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。よって正しいです。
- 契約に関する紛争の解決方法は請負契約書に記載しなければならない事項です。よって正しいです。
ってことで、1が正解ですね。